去る9月8日、日本の皇室とも縁が深かった
英国王室のエリザベス女王が崩御(ほうぎょ)され、
同国で久しぶりに(ヴィクトリア女王の後に即位した
エドワード7世〔在位期間は1901年~1910年〕以来、
この時は男系によりハノーヴァー朝から
ザクセン=コーブルク=ゴータ朝に交替)
「女系」の君主が即位された。新国王・チャールズ3世だ。
果たして王朝が交替し、それによって王位の正統性が失われ、
国民も分断されて、英国は英国ではなくなってしまうのか、どうか。
…と言うと、「女系による継承ぐらいで何を大げさなことを言っているのか。
頭は大丈夫か」と感じる人がほとんどだろう。
それが健全な反応だ。明治の皇室典範で「男系男子」限定という
新しい法的ルールを採用した際に、具体的な参考材料としたのは
西洋王室の在り方、特に英国での王朝交替の実例だった
(井上毅〔こわし〕「謹具意見」、同文書を収める
伊藤博文編『秘書類纂 帝室制度資料』上巻では
“明治廿二〔22〕年四月三日”という日付になっているが、
この時点では既に明治典範が施行された後なので、誤記だろう)。だから今回の英国での新国王の即位も、
わが国とは無縁として視野の外に置く訳にはいかない。チャールズ3世の場合、「女系」継承でも
これまでのウィンザー朝のまま変更なく、ご本人の資質、
人柄、実績などによる今後の評価はともかく、
女系であることに基づく「国王」という地位そのものの
権威の動揺も、当たり前ながら取り立てて認められない。そもそも21世紀の現代に、伝統ある立憲君主国の中で
「女系」継承によって君主の地位の正統性や権威が
左右されるなどと大騒ぎする国が、一体どこにあるのだろうか。【高森明勅公式サイト】
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